「ほう……ずいぶん思い切ったことをしたものだ」 日本行きの飛行機の中で、薫は今日発売されたばかりのグラップドールの専門誌をめくっていた。この本は、日本の記事が充実しているので、アメリカのリーグ関係者も多く愛読しているものである。 その中の記事の1つに『雅様、ご乱心?!』なる見出しがつけられたものがあった。内容は先日行われた、宣伝用グラップドール、ヴィクトリアとの試合を伝えるものである。 長々と文章が連ねられているが、要約すれば、雅らしくない試合運びは、一体どういう心境の変化があったのだろうか、というだけのものだ。 「先にお前が応えてくれるとは思わなかったな」 雑誌を閉じた薫は、飛行機の小さな窓へ視線を移す。ゆっくりと滑走路を移動し始めた飛行機は、やがてふわりと大空へ舞い上がった。 日本へ着くのは、約9時間後── そのころ、日本のGD界は、ちょっとした騒ぎになっていた。原因は、先日のヴィクトリア対雅様である。 積極的に勝ちを取りにいった、雅らしくない試合展開に、「雅様に一体何が?!」とファンたちが騒いでいるのだ。この騒ぎを収拾するには、雅がコメントを発表するのが一番なのだろうが……本人はもちろんのこと、関係者全員が「特にお話することはございません」の一点張りなのである。 彼女の開発者である斉藤女史も「雅には雅の考えがありますからね」とやんわりコメントを拒否していた。 そんなわけで、雅様引退間近説やヴィクトリアとのトラブル説、原作嫌悪説などがファンの間でまことしやかに語られている。 それはファンの間だけではなく、グラップドール参戦中のドールたちにも同じことが言えた。 「みっ雅様、本当に引退してしまうだか?!」 ぐすっと鼻をすすりながら、問いかけるのは鈴木農場所属のグラップドール、ハナである。雅と対戦して以来、すっかり彼女のとりこになってしまったドールの1人でもあった。 目にいっぱいの涙を浮かべたハナが問いかけたのは、雅と同じC社所属のクリソベリル。ハナの今日の対戦相手であった。 「ベリル、なにも知らないの〜」 今は試合中なのに。というか、リング上の会話は観客席に聞こえないので、 「おハナちゃんを泣かせるなんてー!」 ハナファンの間から、クリソベリルへ批難の声が飛んでいた。 「泣かせたのは、ベリルじゃないの〜」 言っても誰も聞いてくれない。 「何、泣いてるんだ、ハナぁーっ!?」 ハナ側のセコンドも慌てていれば、ベリル側のセコンドも「何をやったんだ、ベリルっ?!」と混乱中。 「もうやってられないの〜。ぜんぶ雅ちゃんのせい〜」 ぷくぅっと頬を膨らませ、不機嫌をあらわにしたベリルだったが、試合はできないし、ハナを泣かせたと思われているし、そのことでマスターに怒られるかも知れないし、雅はいなくなるかもしれないし──そんなことを思っていたらだんだんと泣けてきて…… 「うっ……うわぁぁ〜〜〜ぁぁん…………っ!」 とうとう彼女まで泣き出してしまったのであった。 クリソベリル対ハナ。この試合、両者が泣き出してしまったため、無効試合に。この試合、GD史上まれに見る出来事として後々までの語り草になるのであった。 「ベリル、何にもしてないの〜」 さて、お子様ドールによる無効試合の真っ最中。C社の本社ビル前に不審な影が1つ。 淡い水色のセーラーカラーのワンピースを着た少女である。彼女は、先ほどからC社の前をウロウロしていた。彼女に近づけば、頬に1筋のラインが入っていることに気づき、少女が人ではないことが一目で分かるだろう。 また、GDを知っている人間なら、彼女がB社所属のグラップドール、オブシディアンだと見抜いたはずだ。 同時に、何があったのかと目を見張るかもしれない。 今の彼女は、セーラーカラーのワンピースを着ていることから察せられるように、オブシディアンのボディは、非戦闘用の物に換装されていたからである。 オブシディアン──シディアは、大きくため息をつくと、ビルから遠ざかって行った。C社本社ビルから離れたところにあるベンチに腰をおろし、彼女は大きなため息をつく。 「……ったく、私ったら何をやってるのよ──!?」 自分で自分の行動が信じられない。 雅の所属するC社とシディアが所属するB社は、ライバル関係にあるのだ。 こんなところにいることが上にバレたりしたら、お小言が雨あられと降ってくるに違いない。 「本当、何だって言うのよ……っ」 思わず前髪に手をやり、ぎゅっとそれをつかむ。 自分で自分が分からない。 人間がそうするように深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。何をしにここへ来たのか、何がしたくてここへ来たのか、シディアは自分に問いかけてみる。 ここへ来たのは、雅に聞きたいことがあったからだ。 何を聞くのか。それは、先日行われたヴィクトリアとの試合のことだ。 何で、あんならしくない戦い方をしたのか。 本当は試合直後、すぐにでも連絡をしたかったのだが……連絡を取ろうとして愕然となった。 シディアは、雅の連絡先を知らないのだ。C社にかけても取り次いでもらえるはずがない。 以前、デートしたときは、柊経由で雅から連絡があった。柊に頼めば、雅と連絡を取るのは簡単だったのだろうが……それをするにはシディアのプライドが許さなかったのである。 連絡を取りたいけど、取れない。そのジレンマに苦しんでいるうちに幾日かすぎ、結局いてもたってもいられなくなってB社を飛び出してきたのである。 飛び出して来たのは良いものの、雅に会わせてほしいといったところで、会わせてもらえるわけがないのだ。 C社とB社は、ライバル関係にあるのだから。 「……まるでロミオとジュリエットね…………」つぶやいてみて、ふと思考が止まる。「っ?! ちょっ……なっ、何を馬鹿なこと──!?」 シディアは一人で、赤くなったり青くなったり。GDの関係者が見れば、目玉を落っことしてしまうに違いないであろう、珍しい光景であった。 シディアが一人百面相をしているその頃。C社の中では、雅が出かける準備をしていた。 「ごめんねえ。本当にごめんっ!」 「大丈夫ですよ、洋子さん」 顔の前で手を合わせ、申し訳なさそうに頭を下げる開発者へ、雅は微笑み返す。気にしないでほしいと言っても、斉藤は何度も謝罪を繰り返した。 自身の作品を道具のようにしか扱わない開発者も少なくない中、斉藤女史は開発したドールを家族として大切にしてくれている。彼女のその姿勢は、チーム全体に及び、常日頃から雅は自分が幸せだと感じていた。 「それはそうと、そろそろ朔のところに行かないとまずいんじゃないですか? 麗も迎えに行かないと……」 「あ、やだ。ホント。もうこんな時間なの?!」 腕時計で時間を確認した斉藤女史は、あわてて椅子から腰を浮かせた。デスクの上に置いてあった資料を小脇に抱え「下に運転手の手配はしてあるから──!」 「ありがとう、洋子さん。お仕事がんばって」 「うん。それじゃ、行ってくるわね!」 満面の笑みを浮かべて手を振る斉藤女史を、雅はくすくすと笑いながら見送った。男性中心のこの業界の中で、女性ながら第一線を走っている彼女は、時々ああいう子供っぽいことをする。 「そこが、洋子さんのカワイイところだよね」 雅はつぶやくと、手早く残りの身支度を済ませてしまうことにした。 耳部のセンサーは、斉藤女史によって取り外されている。これがない状態の雅は、人間でいう近視の状態になってしまうが、女史が用意してくれたサングラスで、その辺は補うことができた。 一番のポイントは、演劇用のファンデーションを使って、頬に走るラインを消すことである。 「よし、こんなものかな」 センサーとラインがなくなってしまえば、人目でロボットだと見抜ける者は限られてくるものだ。GDファンや関係者も、すぐに見抜くことは難しいだろう。 サングラスをかけてしまえば、より一層判別は困難になる。先日のヴィクトリアとの試合の時にも思ったが、違う自分になるというのは、これはこれで結構面白い。 「……ッ、もう……バカバカしいったらありゃしない」 C社の前をウロウロしていたシディアは、本社ビルに背を向け──凍りついた。 「おめえ、さっきから何やってんだ?」 愛車のバイクに跨ったまま、車道に停止しているアサミがいたからである。いつもの特攻服と違い、今日はパンキッシュなスタイルに身を包んでいた。 「なっ…ななななな何でアンタがここにいるのよ!?」 おまけに普段は面倒くさがるノーマルボディに換装して。とんでもないところを見られてしまった羞恥から、指先どころか毛先までもがわなわなと震えた。 「何でって、たまたまだよ。たまたま。っつか、おめえのほうこそこんなところで何やってんだよ?」 あっちでウロウロ。こっちでウロウロ。怒ったり拗ねたり、なにやらショックを受けたような顔になったりと、一人で百面相。面白くて、ついつい見物してしまったのである。 「あ、アンタには関係ないわよ!」 「どーせ、男女のことだろ」 ズバッと言ってやったら、シディアの黒髪がぶわっと逆立った。分かりやすいリアクションである。 「かっカンケーないわよ、あんなやつ!」 「さっきからC社のビルのほうに行ったり、戻って来たりしてたじゃねーか。上のほう眺めたりよ」 「アアアアアンタ、いつから見てたのよ?!」 茹蛸と真っ向勝負できそうなくらい、シディアの顔は真っ赤になっていた。試合中の冷酷な表情とは似ても似つかない、人間の女の子のような反応に、アサミは思わず目を丸くする。 驚きの後にわいてくるのは、笑いといたずら心だ。ぷっとふき出せば「何、笑ってンのよ!? そんなにボロ雑巾にされたいわけ?!」 「あぁ? ボロ雑巾だぁ? そのノーマルボディでできるもんならやってみやがれってんだよ」 「くぅっ……!」 アサミの指摘に、シディアの表情が曇った。このボディでは、暴走族娘の言うとおり彼女をボロ雑巾にすることなんて到底不可能である。 「っははは! 男女とやり合ってからこっち、おめえにもカワイイところがあるんだなぁってしみじみ思うぜ」 「っな……!? 何言ってンのよ、バカじゃないの?!」 「人が珍しく褒めてやってるってのに、バカじゃないのはねえだろ」 「今のどこが褒め言葉なのよ!?」 キャンキャン噛み付いてくる様は、子犬がほえているみたいだ。本人は精一杯威嚇しているつもりなのだろうが、アサミはちっとも恐怖を感じていない。 「おめえさあ、いっそのこと試合用のボディもあんな喪服みてえのじゃなくて、今みてえなもうちっと明るい色使いのやつに変えてもらったらいいんじゃねえの?」 「余計なお世……話…………!」 「あ? 何だ? どうした?」 シディアの視線が、アサミの後ろに向いている。右から左へ移動するそれを追いかけると、黒い車が一台通り過ぎていくところだった。 「あれがどうかしたのかよ?」 「……てた」 「あ?」 「雅が乗ってたのよ! ちょうどいいわ。アンタ、今の車追いかけて!」 言いながら、シディアはアサミの後ろに座ろうとする。 「おい、コラ! 勝手に乗ろうとしてんじゃねえよ! そこは雪乃専よ──」 「ボロ雑巾どころか、おがくずみたいになりたいわけ?」 地獄の業火を身にまとい、般若降臨。 逆らえば、間違いなく殺される。ごきゅっと生唾を飲み込んだアサミはチクショと短い悪態をつく。 「1つ貸しだからな!!」 しっかりつかまってろよと叫び、アサミはバイクを急発進させた。 雅がアサミのバイクに気づいたのは、それから数分後のことである。 「参ったな……」 バックミラーに移る、見覚えのある2つの顔。つかず離れずといった位置取りから、こちらをつけているのは間違いなさそうである。 「B社のアサミとオブシディアンですね──」 何でこんなところに? 運転手が驚きに目を見張った。 「シディアちゃんのことだから、ボクのことを心配して来てくれたんだろうね」 アサミは偶然その場に居合わせたに違いない。 「いや──アサミちゃんもボクのことを気にしてくれて、C社の近くまで来てたのかな? 何にせよ、女冥利に尽きるね」くすくすと雅はうれしそうに笑った。 「笑い事じゃありませんよ。どうするんです?」 「そこは、高岸さんのテクニックに期待するよ」 「うまく逃げられればいいですけどね」 苦笑いを浮かべ、高岸はハンドルを右に切った。 アサミがシディアに脅されて、雅が乗っているという車の追跡を開始して1時間。何度も見失いそうになったものの、そこはそれ、レディースの経験と勘が物を言い、何とか見失わずに済んだ。 (見失ったりしたら、マジで後が怖ぇもんな) というか、今、この状態でいるのも戦々恐々といった態なのである。シディアが背中に噴火寸前の火山を背負ったまま、じとーっと前方を行く黒い車を見据えているからだ。 「……にしても、このままいけば空港だぞ?」 左側に見えてきたターミナルビルを一瞥し、アサミは眉間にしわを寄せた。空港なんて、グラップドールにはあまり縁のないところである。 「アウトレットで買い物ってわけでもねえだろうしなあ」それなら、こちらの追跡を振り切らなくたっていいはずだ。「空港に何の用があるってんだ? 旅行か?」 「旅行に行くんなら、私たちから逃げる必要なんてどこにもないじゃない」 バカねと、シディアは吐き捨てる。アサミが何か叫んでいるが、少女の耳にはまったく届いていなかった。 シディアの胸中を占めるのは、雅へ向けられる名のないマグマのような灼熱の感情である。 面白くない。非常に面白くない。一体、雅は何をたくらんで、こそこそしているというのか。 (絶対吐かせてやる!) 前方を行く車を、シディアはビームでも飛び出さんばかりの鋭い視線で睨み付けるのだった。 一方、彼女が睨んでいる車の中では 「すいません。逃げ切れませんでしたね」 高岸が申し訳なさそうに眉尻を下げていた。その後ろで、雅はしょうがないよと肩をすくめている。 「さすがはアサミちゃん、といったところかな。いいよ、空港の人ごみにまぎれてしまえば大丈夫だろうから」 帰りは一般の交通機関を使って帰るから、上手くアサミたちを誘導してくれないかと、高岸に依頼した。 「やれるだけやってみます」 「頼むよ」 高岸を軽く拝んだ雅は、シートを移動していつでもおりられる体勢を作る。周りの状況を見つつ、アサミの乗るバイクの位置を把握し、こちらが降車したことを悟らせないように…… 「よし、行ってくるよ」 「行ってらっしゃい。ご武運を──」 「ありがとう」 ご武運をなんて、こんな時に使う言葉ではないが、気分的には間違っていないような気がする。高岸ににこりと微笑んだ雅は、大急ぎで空港のターミナルビルへ駆け込んだ。 ちらりと後ろを振り返れば、アサミの乗ったバイクが車をつけてそろそろ進んでいく様が見える。 「今度こそ、大丈夫……かな?」 ほっと胸を撫で下ろした雅は、歩調を緩めて待ち合わせの場所へ向かった。 ターミナルビルの一角にあるオープンカフェが、待ち合わせの場所である。 雅はエスプレッソを頼み、待ち人が来るのを待った。 「やれやれ、やっと着いたか」 9時間のフライトを終えた薫は、ぐるりと周囲を見回した。紅の双眸に映るのは、西海岸の空港とはまったく違う風景である。今は違和感があるが、すぐに慣れるだろう。 迎えとの待ち合わせは、ターミナルの一角にあるオープンカフェだ。いつも帰郷したときは、いつもこの店で迎えと待ち合わせしているので、薫は慣れた足取りでカフェに向かう。 「ちょっと、どうしてくれんのよ!? 見失っちゃったじゃない!」 「アァ!? オレのせいだっていうのかよ?! っつか、ダレがここまで連れてきてやったと思ってんだ?!」 ばたばたとロングヘアの少女とショートカットの少女が、少し離れた所を通り過ぎていく。 周囲の人たちは迷惑そうな顔で、二人の少女のために道をあけてやっていた。 「……今のは、オブシディアンとアサミ──か?」 眉間にしわをよせ、薫はつぶやく。今の二人は、アメリカにおいても、そのキャラクター性で高い人気を誇っているGDであった。日本リーグに参戦することもあって、主だったGDの資料は取り寄せ、目を通してきているのである。 「……これは早めに合流して、さっさと洋子のところへ行ったほうがよさそうだ」 彼女たちが遠ざかっていくのを見送ってから、薫は待ち合わせ場所に急いだ。 オープンカフェの入り口に近いところに腰を下ろしていた迎えの姿を見つけ、薫は声をかける。 「雅!」 聞き覚えのある懐かしい声に名を呼ばれ、雅は顔を上げた。声の方向に顔を向ければ、待ち人の姿がある。 自分と同じ斉藤洋子女史が開発を担当したグラップドール。雅から見れば姉にあたる人物だ。 「薫……!」 白銀の長い髪に紅色の双眸。アメリカのリーグでは、サイクロン・パイレート、スターシルバー・パイレートなどと称される彼女は、 「久しぶりだな」にこりと微笑む。 雅が空港を訪れたのは、彼女を極秘裏に迎えるためだった。席を立ち、雅は急ぎ足で姉のもとに駆け寄る。 「久しぶり。会えて嬉しいよ」 そっと背中に手を回して彼女を抱きしめると、姉は「相変わらずだな、お前は」と微苦笑をこぼす。 「その姿は、ボクのため?」 少しだけ体を離して、雅は薫の姿を見た。 雅がそうであるように、彼女もまたパンツスタイルを好んでいる。今日もてっきりパンツスーツだろうと思っていたのだが……今日はシックな黒のタイトスカートに紫のジャケットを合わせていたのだ。 すらりとして上背がある薫は、まるで一流のモデルのようでもある。先ほどから、いくつもの好奇な視線が彼女に向けられていた。それらの視線を意に介する様子もなく、薫はふっと口元を緩める。 「おめでたさも変わらずか」 彼女は軽く肩をすくめると、ジョージが全ての荷物をまとめて日本に送ってしまったんだと告白した。 ジョージというのは、アメリカにおいて彼女のマスターをつとめていた人物である。 「残っていたのがコレだけだったから、仕方なくこれを着てきただけだ」 社に戻ったらお前の服を貸してくれと、薫は言う。 「せっかくだから、洋子さんたちにもその姿を見てもらったら? 麗も喜ぶよ」 「面白がるの間違いじゃないのか? 見世物になるのはごめんだぞ」 薫はフンと鼻を鳴らす。雅はもったいないと、口角を下げた。 麗は元気かと聞かれ、もちろんだと答える。麗は、雅の妹にあたるドールだ。機体は完成しているものの、リーグ参戦はまだまだ先の予定である。 「そんなことより、ここに来る前にオブシディアンとアサミを見かけた。見つかると面倒だろう?」 「がんばるなあ」姉の話に雅は思わず苦笑する。 その直後だった。 「ア……アンタたち、何やってんのよ!?」 しまったと思ってももう遅い。振り向けば、柳眉を逆立てたシディアと訳が分からなくて目をまん丸に見開いているアサミがいた。 「シ、シディアちゃん……」 ジーザス。まさか、このタイミングで見つかるとは。雅は思わず額に手を当て、天を振り仰いだ。 「厄介なことになりそうだ」 渋い顔で薫は口元に手を当てる。 |