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オリジナルブレイブサーガSS
グッディ・グッディ



 昼下がりの穏やかな午後。ここ数日、立て続けに起きていたトリニティの襲撃も今日はお休みのようである。
 前戦に出ている勇者たちはつかの間の休養を、整備班を中心とする裏方はここぞとばかりにロボットたちの修理・メンテナンスを行っていた。
 時は金なりとも言う。クルーたちは、しばらくなかった穏やかな時間を有意義に使っていた。
 戦闘が続いた後のこういった時間は、購買にとってもかきいれ時になる。戦闘があった日は、ちょっとお買い物を……なんて気分にはならないからだ。
 いつもならば、購買の主であるマッコイ姉さんは、某チームから鋼の竜をはじめとする一団を徴集し、自ら陣頭指揮を取って、商売に励んでいる。
 が、今日は少しばかり違っていた。
〈私…………もう慣れてしまいました〉
 購買にて商売に励んでいるのは、鋼の竜を筆頭とした一団だけ。
 肝心の購買主人は、どこかへ出掛けてしまっていた。



「神無っち〜! 待ってたっすよ〜」
 ラストガーディアン内には、ミーティングルームが幾つか設けられている。これらの部屋は、会議やイベントなどの説明会や部署内の打ち合わせに使われたり、ミニイベントの会場になることもあった。
 もちろん、使用申請さえすれば、誰でも使用できることになっている。
 ミーティングルームの中でも、とりわけ小さい部屋を一つ、小一時間ほど借り切ったのは、購買部の主、マッコイ姉さんだった。
「どうも。お待たせして」
 彼女がミーティングルームに呼び寄せたのは、郵便戦隊の青木神無であった。そっけない言葉遣いと変化の乏しい顔とで、近寄り難く思われている彼女だが、実際は全くそんなことはなかったりする。
「それで、今日はどの懸賞に応募するんです?」
 マッコイ姉さんの向かいに腰を下ろした神無は、持って来たポーチの中からボールペン・ハガキ・50円切手の3点をずらりと並べた。
「神無っち……」
 彼女の用意周到さにマッコイ姉さんは脱力し、とほほ〜と肩を落とす。
 神無は懸賞運が強い。懸賞に応募すれば、7割から8割の確率で当たる。現に彼女の部屋の物も半分くらいは、懸賞で当てた物だったりするのだ。
 そこに目をつけたのが、浪速商人も裸足で逃げ出し、近江商人は黙って道を譲るマッコイ姉さんである。姉さんは、懸賞商品の中でもこれは! というマニア垂涎の一品をチョイス。神無に頼んで応募してもらっているのだ。
 頼む側には下心があっても、頼まれた側には下心がないためだろうか。今のところ当選率90%という高確率で、それらの品々を手にしていた。
「違うんですか?」
 マッコイ姉さんが肩を落としたので、神無は軽く目を見張る。てっきり、懸賞の応募を頼まれると思っていたからだ。
「や、応募してもらいたい物もあるっすけど、メインは別件っす」
「なら、平行して片付けましょう。どれに応募すればいいんです?」
 神無に聞かれ、マッコイ姉さんは、持って来ていた雑誌の束を取り出した。
「えぇっと……この雑誌のコレと、こっちの雑誌のコレとっすね……」「あぁ、付箋か何かありませんか?」「あるっすよ〜」
 なんて、しばらくの間ごそごそとやってから、マッコイ姉さんは本題に入った。
「近ごろ、ちょっと苦戦が続いてるとは思わないっすか?」
「……あぁ、そのようですね。敵も馬鹿じゃないですからね。手を変え品を変え。ご苦労なことです」
 ハガキを書く手を止めて、神無は顔を上げる。
「向こうは、新型の開発とかもやってるみたいっすからね。それに比べると、こっち側は後れを取っていると思わないっすか?」
 新兵器を開発している訳でもなければ、超AIなどを搭載した勇者たちを参考に、新しい勇者の研究開発をしているわけでもなし。
 歯痒く思うことはないっすか? とマッコイ姉さん。
「まぁ……仕方ないと言ってしまえばそれまでなんですが……もっと何とかならないのか、とは思いますね」
「さすが、神無っちっす!」
「持ち上げても……小動物の調教用キャンデーくらいしか出て来ませんが」
 ポケットから、いろんな種類のキャンデーが出て来る。神無は無表情のまま、それらをころころとテーブルに転がした。
「こんな物を常備してたっすか……」
「小動物は、いつはっちゃけるか分かりませんし」
 神無はしれっと答える。
「それにしても、調教用ってのはあんまりじゃないっすか?」「ニュアンス的には間違ってませんよ」「そんなもんっすか?」「そんなもんです」「……1個もらっていいっすか?」「どうぞ」
 コーラ味のキャンデーを口にほうり込んだマッコイ姉さんは、まじめな顔で、
「話を元に戻すっす」
「我々をスカウトしたように、新しい勇者でもスカウトしてくるつもりですか?」
 彼女が、郵便戦隊設立に深くかかわっていることを知っているからこその、神無の発言であった。
「話が早くて助かるっすが、惜しいっす!」
 残念そうに、マッコイ姉さんは右手を上下させる。
「今、ラスガーに集っている勇者たちの中には、自分たちの世界に仲間をおいて来てる人たちがいるっすよ! リサーチは万全っす」
 神無がぎょっと目を丸くしているのにもかまわず、マッコイ姉さんは演説を続ける。
「ここは一つ、置いてきぼりをくらってる勇者たちにも、こっちへ来てもらおうじゃないっすか!!」
「なるほど。でも、それって購買の仕事なんですか?」
「購買の仕事は、みんなに喜んでもらうことっす! 人が増えれば、需要も増える。需要が増えれば、購買はますます繁盛っすよ!!」
 そっちが本音か。
 彼女らしいといえば、彼女らしいが。
「それで、それと私と何の関係が?」
 足を組み、腕を組み、神無は椅子の背もたれに背を預けた。マッコイ姉さんに向ける視線は、彼女にしては珍しく挑戦的である。
 その視線を受けとめる側、マッコイ姉さんも負けてはいなかった。これまで星の数ほどの人間と会い、商売をしてきたのである。その中には、神無よりも数十倍は手ごわい相手も含まれているのだ。
 駆け引きで、神無に負けるハズがない。
「ネタはあがってるっすよ、神無っち」
 マッコイ姉さんは右手でほお杖をつき、左手でテーブルの下に隠していた箱を取り出し、神無に見せる。
「それが何か?」
「もう忘れたっすか? しばらく前に神無っちがくれたお土産の御菓子の空箱っすよ。私だけじゃなく、志狼君や郵便戦隊のみんなにも渡してるはずっす」
 マッコイ姉さんは、にやりと笑った。
「これは、志狼君の家の近所の和菓子屋さんが限定で作ってる物らしいじゃないっすか。神無っち、これをどこで買って来たっす?」
 空箱をテーブルに置き、姉さんは言葉を続ける。
「神無っち。これはどこへ行ったお土産っすか? 皐月っちからは、実家に頼んで、このお店を探してもらったけど、発見できなかったという話も聞いてるっす。  皐月っちの実家は、BANに出資できるほどの大金持ち。もちろん、世界中を探させたそうっすけどね〜」
 ここに電気スタンドがあったのなら「吐くっすよ!」と、ライトの強い光を神無に向けているところだ。もちろん、その場の必須アイテムとしてカツ丼は外せない。
 ──それはともかく。
 神無は、ふっと笑みをこぼすと、
「まぁ……分かってましたけどね」
 組んでいた腕をほどいて、彼女はひょいと肩をすくめた。
「貴方がこんな話を切り出す時は、絶対の確信があるときだけですから」
「やっぱり、神無っちは別の世界へ行けるっすね」
「えぇ。その土産を買った時が初フライトでした。それから、2度ほど別の世界へ飛んでます」
「頼もしい話っす。で、別の世界にはすぐに行けるっすか?」
「単独なら、すぐにでも。ただ、少々の荷物なら乗せられますが、人を連れ帰ることはできません」
 ましてロボットとなると、完全にお手上げである。
「むむむむ……そうっすか」
 神無の返答に、マッコイ姉さんは腕を組んでうなった。
「さいわい、連れ帰ることのできる心当たりはありますから、そっちを当たってみます」
「頼むっす。こっちは、向こうに残っている勇者たちにあてて、手紙を書いてもらうっすよ。その方が説明の手間が省けるってもんっす」
「分かりました。ところで、この雑誌、借りて行っていいですか?」
 テーブルの上に並べられた雑誌の数々をちらりと一瞥し、神無はマッコイ姉さんにたずねる。
「もちろんっす。そっちもしっかりゲットしてほしいっす」
「こちらは……任せてくださいとは言えませんね。運任せですから」
 神無は言うと、テーブルの上を片付けて、席を立った。休憩時間を利用してここに来たので、そろそろ戻らなくてはならないのである。
「それじゃあ、報告を待ってるすよ」
「分かりました。そちらも下準備の方、よろしくお願いします」
「任せとくっす!」
 こうして、購買発『顧客を増やすついでに戦力もアップっすよ! 大作戦』はひそやかに進行してゆく運びとなったのであった。


*****



 作戦はひそやかに、かつ、大胆に。マッコイ姉さんと青木神無のコンビは、作戦遂行のための課題を着々とこなしていった。
 そして、作戦発動から半月後──
「トーコさん、お休みのトコすまないっすー」
 格納庫の一角を占拠している、ウィルダネス組の所へ、マッコイ姉さんは足を運んでいた。彼らの占拠しているスペースは、リビングもどきと酒場もどきの二つに別れている。
 酒場もどきスペースの主であるジャンクは、マッコイ姉さんも、市場調査などで世話になることがあるのだが──今は不在のようだ。
 ぐるりと見回してみても、他の面々は見当たらない。今は、トーコしかいないようだ。彼女は、この間、購買で買って行った簡易ハンモックセットに揺られていた。
「ん〜……って、姉さんじゃないの。どーしたの?」
 寝起きの悪さには定評があるトーコだったが、今回はすぐに目を覚ましてくれた。
「そのハンモックセット、気に入ってくれてるようっすね」
「まーね」
 ふわぁぁあぁぁとあくびを漏らし、トーコはハンモックからおりる。艦内でもトップクラスのばいんっ、きゅっ、ばいんっの肢体は、赤い襦袢で隠されていた。
「着物とは珍しいっすね」
「貰い物なんだけどね〜」
 あはは〜と笑いながら、トーコは、帯ではなく和柄のコルセットをつける。袖を通しているのは着物でも、それの着方は彼女流。
「今日はお一人っすか?」
「ジャンクは、シップの中よ。果実酒の漬け込みやってるわ。ユーキとラシュネスは外へ遊びに出てて、イサムとグレイスはそのおもり」
 トーコは、最後に貰い物のおこぼを履いた。おこぼは、京都の舞妓さんなどが履いている、独特の形をした下駄のことである。
「それで、今日はどうしたの? 姉さん」
 トーコは、マッコイ姉さんを単に『姉さん』と呼んでいた。
「実は、見てもらいたい新商品があるっすよ」
「新商品?」
 首をかしげるトーコに、マッコイ姉さんは力強くうなずき返す。
「本当は、ラシュネスくんやユーキくんにも見てもらいたかったっすけど……」
「もうそろそろ帰って来るころだとは思うけどね……」
 トーコは、頬を人差し指でかいた。
「まぁ、いいっす! 先にトーコさんに見てもらうっすよ!」
 マッコイ姉さんはそう言うと、トーコの手を取って、こっちっすと引っ張って行く。
「あ、ちょっと! これ、走れないのよ」
 履いているおこぼが、こぼこぼと独特の音を立てた。



 マッコイ姉さんに引っ張られ、トーコが連れて来られたのは同じ格納庫である。新製品と言うだけあって、その品物は大きな布で覆い隠されていた。
「これがその新商品?」
「そうっすよ」
「なんつーか……デカいわね」
「新商品っすから」
 えへんと胸を張って答えたマッコイ姉さんは、それじゃあ行くっすよ! と布に手をかけた。
「せぇの! ご開帳っすよ〜!!」
 大きな布が取り払われ、下から現れたのは……
「ぶい」
「ぶっ!?」
 あぐらをかいて座った、ダークグリーンのロボットである。両肩に装備されたキャノンはくるりと半回転して下方を向いていた。
 『ぶい』のせりふ通り、布の下から現れたロボットは、Vサインでのお目見えである。また、マッコイ姉さんが「新商品」と繰り返したいたのを証明するように、「新商品 一体限定」と書かれたプレートを首からぶら下げていた。
「おいおい。大丈夫か、トーコ姐ェ」
 新商品のはずのロボットは、親しげにトーコに話しかける。話しかけられたトーコはというと、珍しくコケていた。
「ビッ、BDッッ!! あ、アンタね……『ぶい』ってナニよ?! 『ぶい』って!?」
「気にするトコはそこかよ、おい」
 BDと呼ばれたロボットは、呆れ声である。
「ふっふっふっ。どうやら購買の新商品、気に入ってもらえたようっすね!」
「いや気に入るとかそういう問題じゃなくて……え〜と……聞きたいことは山ほどあるんだけど、どこから聞けばいーんだか……」
 格納庫の床にペタンとお尻をつけて、トーコはマッコイ姉さんを見上げた。
「入荷経路は秘密っす。あの新商品のプレートは、BDくんの強い要望だったと聞いてるっすけど」面白いロボットっすね〜。
 姉さんを見ていたトーコの目が、BDに移る。BDはそれだけで、彼女が何を言いたいのか察したようで、
「修理も万全で新品同様! 新商品ってのもあながち間違いじゃねぇだろ!」
 得意げに笑って答えた。ちなみにこのプレートは、彼を修理してくれていた工場の偉い人が、大笑いしながらいそいそと作ってくれたそうである。
「あ、そ……。でも、よく信用する気になったわね。何だってついて行こうって気になったワケ?」
「あぁ、J……じゃなかった、ジャンクから手紙をもらったからな」
「何ですって!?」
「これっすよ」
 マッコイ姉さんはポケットから、少しよれてくしゃくしゃになった封筒を取り出した。それを受け取り、中身を引っ張りだしたトーコは、またコケるはめになる。何せ、手紙にはたった一言、

『来い。』

 とだけしか書かれていなかったからだ。わずかに残った隙間を埋めるように、小さく『J』と書かれてある。
「これは他の誰にも真似できねぇよなあ」
 げらげらと笑いながら、BDは、だから信用する気になったんだと続けた。
「姉さん……ジャンクは、ウチのアニキは、BDをこっちに連れて来るつもりだって知っててこれを?」
「もちろんっす。ジャンクさんに隠し事はできないっすから」
 彼には《サトリ》という人の心を読むことのできる異能力があるし、それを使わずとも何を考えているのか、大体分かってしまうのだ。
「あぁ、そう……」
 ふふふふと低音の笑いを漏らしたトーコは、ふいにふっと姿を消してしまった。どこかへ《テレポート》したのである。
「トーコさん?! どこへ行ったっすか!?」
 マッコイ姉さんは、慌ててキョロキョロと回りを見回したが、もちろんトーコの姿は見つからない。彼女がいた場所には、ジャンクが書いたという手紙が残っているだけだ。
 直後、ウィルダネス組が占拠しているスペースの方から、どかーんっ! という爆発音と「──ッの、クズ鉄がァッッ!!」だの「何だぁっ?! クズ鉄言うな! 馬鹿!」「馬鹿言うな!」とかいう罵声がかすかに聞こえて来た。
「……あれは?」
 落ちた手紙を拾いつつ、救いを求めてマッコイ姉さんは、BDを仰ぐ。しかし、彼はげらげらと笑い転げているだけである。
「放っておいて大丈夫っすか?」
「あぁ、気にするねぃ。いつものこった」
 顔の前でぱたぱたと手を振って、BDは笑いをかみ殺していた。と、そこへ、
「BDさんっ!?」
 やや裏返ったラシュネスの声が飛んで来る。
「あ、帰って来たっすね。なかなかいいタイミングっすよ」
 マッコイ姉さんは、驚き顔でぞろぞろとこちらに近づいてくるウィルダネス組に笑みを向けた。
「よぉ。元気だったか?」
 ひょいと片手を持ち上げて、BDはラシュネスに応えた。
 ラシュネスは「あうぅ〜」と目尻に涙ならぬオイルを浮かべ、
「BDさ〜ぁんっっ!」と飛びついた。
「うお!? 何だ? どうした?!」
 思わぬ歓迎ぶりに、BDは目を白黒させる。
「うっわ! BDっ?! どうしたのさ?! うわ、うそ〜。わ〜……すご〜い」
 ユーキとイサムは、ぽかぁんと口を半開きにして、マッコイ姉さんの側へ寄って来た。
 グレイスはBDの側へ寄り、
「まあまあ、BDさん。お久しぶりですわ。その様子ですとご健勝でしたのね」
「お陰さんでね。お前さんとこのじーさんは、い〜い腕してらぁな。見てくれよ、このボディーにこのプレート。ボディーはぴかぴか。プレートのサイズもぴったりだぜ」
 自慢げに腕を広げて見せながら、BDは笑う。BDは、ボディに傷を負っていたりしたので、修理とメンテナンスを、とあるロボット工場に依頼していたのだ。その工場というのが、イサムの祖父が経営する工場なのである。
 この工場はグレイスを作り出すなど、確かな技術を持ち合わせているため、トーコも安心してBDを預けたのだ。
「じいさんを褒めてもらえると、孫の俺としても鼻が高いよ」
 イサムは苦笑しながら、それにしても、どうやってこちらへ? と真っ当な疑問を口にする。
「そこのマッコイ姉さんとやらに頼まれたってぇヤツが迎えに来たのさ。ジャンクからの手紙を持ってな」
「ジャンクさんからの手紙?!」
 ユーキがぱちぱちと瞬きをするので、マッコイ姉さんは先程拾っておいた手紙を彼らに見せた。
 『来い。』とだけしか記されていない、それにユーキは無言。ラシュネスは「あややや〜」とつぶやく。グレイスはため息をつき、イサムは「あの人らしいですねえ」と笑っている。
「これはやっぱりアレっすか? BDくんなら、これだけで分かるだろうっていう……」
「ンな訳ねぇって」と、BD。
「違うっすか?」
 マッコイ姉さんがイサムへ顔を向ける。イサムは朗らかに笑ったまま、
「あれこれと言葉を綴るのが、面倒臭かっただけでしょう」とのたもうた。
「だよなー。あいつ、面倒臭がりで、トーコ姐ェ以外のことはどーでもいいしな」
「それでも、全部ひらがなじゃなかっただけ、まだ、マシですねえ」あはははは。
「言えてらあ」わはははは。
「……そこは笑うとこっすか?」
 マッコイ姉さんが、思わずぽつりと言葉をもらした。彼女の横でユーキも「さあ?」と彼らの言葉をわずかばかり疑問視している。
「……笑うしかないところなのですわ」
 グレイスは一人、ため息をもらす。
「ところでお前ぇ、いつまでくっついてるつもりだ?」
 小さい子供のようにぴったりとくっついているラシュネスに、BDはたずねた。
「あぅ、すいません。BDさんに会えて、ほっとしちゃいまして……」
「? 何かあったのか?」
 弟分の返事に、BDはユーキを見下ろす。
「あぁ、何かね。夢見が悪かったらしくって」
「はァん?」何だそりゃあ、とBDが目を丸くした。
 彼から離れたラシュネスは、昨夜、BDがぐっちょんぐっちょんのげっしょんげっしょんになる夢を見たのだと答えた。
「何だそりゃあ」
「私だって分かりませんよぅ」
 本当に、BDがぐっちょんげっちょんになってやしないかと、昨夜は心配で眠れなかったのだと、ラシュネスは応える。
「それでまぁ、気分転換に外へ出ていたんですよ」
 とは言え、人目についてはいけないことには変わりがない。そこで、人里離れた山奥で半日遊んで来たのだ。こういう時、勇者ロボの中でも特に小さいボディは便利である。
「なるほどねぇ。ま、気にするねぇ。俺ぁ、見ての通りぴかぴかだからよ。なんつっても、新・商・品! だからな」わはははは。
 BDは、首から下げたままのプレートをラシュネスの方へ突き付けた。
「おぉ〜」
 ラシュネスは心底感心したように、ぱちぱちと手を叩いている。
 マッコイ姉さんを含めた他の4人は、微苦笑を浮かべるだけだ。
「ねえ。ところで、あっちでバカスカやってるアレは何?」
 ユーキが指したのは、自分たちのプライベートスペースがある方である。
「トーコ姐ェが、ジャンクの野郎とケンカしてんのさ。放っとけ。放っとけ。腹が減りゃあ、そのうちやめんだろ」
「やめますかねぇ」
「やめますわよ……多分」
 ラシュネスは首を傾げ、グレイスは疲れたように肩を落としている。
「え〜っと……とりあえず、確かに新商品、お届けしたっすから……」
「あぁ、恐れ入ります。近々、玉露とお抹茶を買いに寄らせてもらいますので」
「了解っす。とっておきの品を見せるっすよ」
「いつもありがとうございます」
「何をおっしゃるっすか。こっちもごひいきにしてもらってるっすから、当然っすよ」
 ぺこぺことお互いに頭を下げ合う、マッコイ姉さんとイサム。その間にユーキが割り込んで、エダマメを育ててみたいんだけど、苗は手に入ります? などとマッコイ姉さんに問い合わせていた。



 まぁ、そんなこんなで、ラストガーディアンに新しい仲間が増えたのである。
「ふっふっふっ。こんなのは序の口っすよ〜。神無っち!」
「は。次の仕入れも万事滞りなく」
 マッコイ姉さんの後ろに片膝立ちで控えていた神無が顔を上げた。
 表情はいつも通りの無表情ながら、この時代劇の上様と上様付きの忍びのようなこの会話、何げに、神無はノリノリである。
「さすがっすね!」
「これもマッコイ姉さんのお手配があってのこと……」
「頼もしいっすよ! 神無っち!!」
「もったいきお言葉……」
 神無はかしこまって頭を下げた。
「ふふふふ。この調子で、ばんばん行くっすよ!!」
「心得ましてございます」
 ここで後ろを振り向いて、マッコイ姉さん。
「ノリノリっすね、神無っち」
「マッコイ姉さんには、かないません」


 代官と 越後屋のような ノリでシメ。(字余り)












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